防音室の「広さ」と家の中の占有率について
はじめに
防音室で一番大切なことは、ピアノの音が外に漏れないこと(遮音性能)。二番目に大切なことは? それは「快適にピアノの練習ができること」でしょう。
「防音室」という字面は、何やら「防空壕」に似ており、避難所、退避場所といった“仮の場所”のようなニュアンスを、私は感じます。
快適にピアノの練習ができるスペースという第2の目的を重視するなら、防音室よりも「練習室」と称した方がよい気がします。
下の記事に書きましたが、練習とは「洗練された芸術」「意識的で創造性に溢れたプロセス」です。
大げさにいえば、「芸術性と創造性を発揮する場」にしたいですね。
防音室は「ひと回り広いサイズ」を
さて、オフィスにおいても、机の上が狭かったり、お隣の座席と幅が狭いと、じっくり創造的な仕事に取り組むのは難しいもの。同僚とのコミュニケーションを取りつつも、自分の仕事に集中できる一定の広さの空間は大切です。
防音室も、ピアノを入れるだけでいっぱいになるような窮屈なスペースでは、芸術性と創造性を発揮するのはなかなか難しいです。
2.0畳、2.5畳のアップライトピアノ用の防音室があります。「ピアノを弾く」という行為だけなら事足りますが、芸術性と創造性の発揮するには、もう少しスペースに余裕がほしいところ。
ひと回り広い3畳の防音室なら、楽譜に書き込みをする小さな机を置いたり、友人が遊びに来た際、室内に座って聴いてもらったりすることができます。
ですので、ユニットタイプの防音室を導入するなら、アップライトピアノで3畳、グランドピアノで4.3畳と、一回り広めのモデルを選ぶことを、私はお勧めします。
ちなみに、私は3畳の防音室にアップライトピアノを入れて練習しています。
防音室の「外寸」と設置場所の広さに注意
さて、ユニットタイプの防音室で表示されている広さは、内側のサイズです。防音室の場合、外側に厚い防音壁があるので、ユニット全体ではもっと広くなります。
ヤマハの3畳の防音室、アビテックス「AMDB30C」を例にすると、
- 内側の広さ:1,766mm × 2,648mm=4.68平米
- 外側の広さ:1,884mm × 2,766mm=5.21平米
となっています。
私が使用している、カワイの3畳の防音室、ナサール「MHSX18-26」の場合は、
- 内側の広さ:1,702mm×2,582mm=4.39平米
- 外側の広さ:1,818mm×2,698mm=4.90平米
です。
不動産公正取引協議会の基準では、3畳=4.86平米、6畳=9.72平米です。
6畳の部屋に、ヤマハの3畳の防音室ユニット「AMDB30C」を設置すると、その占有率は53%。6畳部屋が、防音室の外側と内側でちょうど半分ずつに分かれて2部屋になる寸法です。
ところが、一つ厄介な問題があります。実は 「畳」という単位、地方ごとで広さの基準が単一ではないのです。
- 「京 間」1.82平米 主に近畿地方以西の西日本での使用基準
- 「中京間」1.66平米 主に中京・北陸地方と東北地方の一部、沖縄での使用基準
- 「江戸間」1.55平米 主に関東・東北地方の一部での使用基準
- 「団地間」1.45平米 賃貸マンションや公団住宅等での使用基準
- 不動産公正取引協議会の基準 1.62平米以上
同じ1畳であっても、「京間」と「団地間」では1.25倍の広さの違いがあるのです。
ですので、先ほど例に挙げたヤマハの3畳の防音室ユニット「AMDB30C」(外側の広さ5.21平米)が、どのくらい6畳の部屋を占有するかを示すと、以下のようになります。
- 「京 間」10.94平米 防音室の占有率48%
- 「中京間」9.94平米 防音室の占有率52%
- 「江戸間」9.29平米 防音室の占有率56%
- 「団地間」8.67平米 防音室の占有率60%
- 不動産公正取引協議会の基準 9.72平米 防音室の占有率53%
マンションや公団住宅の場合は、6畳部屋に3畳防音室を置くと、残りは3畳ではなく2畳半程度のイメージを持っていた方がよいでしょう。
ちなみに、私は庭に面した6畳の部屋の奥側に3畳の防音室を設置、庭側の3畳を書斎にしています。
3畳という広さは、鴨長明の「方丈」のようで、日本人には何やら落ち着くサイズ。とても気に入ってます。